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地域に根ざした活動

『やっぱりこわいぞ 糖尿病』 講演概要

糖尿病の合併症

社団法人 衛生文化協会 城西病院 院長 笠原 督

糖尿病は膵臓で作られるインスリンというホルモンが不足したり、働きが悪くなることで、血液中のブドウ糖の濃度が高くなった(高血糖)状態が続く病気です。

この高血糖状態が続くと、やがて全身の神経、血管がむしばまれ、糖尿病神経障害(足先のしびれなど)、糖尿病網膜症(失明に至ることもある)、糖尿病腎症(わが国の新規透析導入患者のダントツ1位)(以上3つを「糖尿病の三大合併症」と呼ぶ)、心筋梗塞、脳梗塞、歯周病などの病気(合併症)を高頻度に発症します。しかもこれらの合併症は何の自覚症状もなく、少し血糖値が高い、糖尿病予備軍と呼ばれる初期の段階からひそかに進行しているのです。
そのため、糖尿病と診断されたら少しでも早く治療を開始し、食事療法・運動療法を含めた治療を継続することが大切です。医師の指導に基づき、糖尿病の診断早期から治療を開始して、血糖を適切にコントロールすれば、合併症を未然に防ぐことも十分に可能です。

視力が1.2あっても糖尿病網膜症が起きている場合もありますし、血糖値が改善すると治ったと思って治療を中断し、数年間も放置し合併症を進行させてしまう人も目立ちます。医療機関への定期的な受診をお勧めします。

歯周病の影に糖尿病

昭和大学歯学部 歯周病学講座 前教授 宮下 元

歯周病と糖尿病は、それぞれ原因も症状も治療法も違っています。しかし、この両者は"炎症"という病態で強く結び付いていることが主に歯科領域の多くの研究で実証されています。

現在、歯周病は糖尿病の第6番目の合併症としてクローズアップされています。

糖尿病のキーワードは、膵臓から分泌され糖代謝に関与するインスリンというホルモンです。

歯周病の本体は、歯肉が口の中の細菌から感染を受け、歯肉を構成する結合組織や歯槽骨などが破壊されていく炎症性の病気です。これらの組織が破壊される時サイトカインという物質が放出されますが、そのうちのTNF-aという物質は、インスリンに強く抵抗性を示し、糖を分解しないように働きます。従って歯周病が重症な程糖尿病も増悪し重症化することになります。

逆にコントロール不十分で重症な糖尿病の人は例外なく歯周病にも罹患しています。こんな場合、これまでは歯科と内科で別々に治療してきましたが、この2つの病気は歯科と医科が連携して同時に治療する必要があります。

歯周病は生活習慣病です。日本では30歳を超えるとおよそ80%以上の高罹患率になっています。この罹患率は旧厚生省が疾病調査に歯肉所見を加えた1963年からほとんど変わっていません。

一人一人が健康に対する意識を高め、生活習慣を改善することで高齢化を迎えたいものです。

だけど優しい杉並三師会

一般社団法人 杉並区薬剤師会 理事 三尾 恵造

薬局では、一人の高齢者が一日に服用する薬の種類が10種類以上になる調剤をすることがあります。内科で糖尿病と高血圧と血栓防止と潰瘍治療と睡眠薬が処方され、歯科で抗生剤と鎮痛剤が処方されれば最少でも7剤です。それに整形外科から骨粗鬆症の薬が2剤加われば9剤です。まだまだ薬が増える要因はあります。「風邪で、めまいで、便秘で、頻尿で」と。数年前までは、「果たしてこれで糖尿病の治療が上手くいくのだろうか?」と、調剤に携わる多くの薬剤師が心配して孤軍奮闘しました。しかし「お薬手帳」の理解が徐々に進んで、昨今では医師歯科医師にも活用されるようになり、他科受診による多剤併用薬の副作用や相互作用を関係者全員で注意するようになりました。「お薬手帳」は、適切でない薬の使い方から患者さんを守るための医療システムです。薬剤師はお薬手帳と処方箋を見ながら、処方された医師や歯科医師に意見を述べることがあります。時には処方変更をお願いして、薬の安全使用のための最後の砦の責任を果たしています。診察中の先生方に疑義照会する作業は、関係者にとって大変なストレスが伴う作業となります。しかし杉並三師会の先生方には、薬剤師の疑義照会に真摯に応えてご協力を頂いて居ります。本日は、主に「お薬手帳の正しい使い方」を解説します。この機会に一人でも多くの区民の皆さんに、適切でない薬の使い方から身を守る方法を勉強していただきたいと願っています。

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